神霊狩小説


Q 〜エピローグ〜

 
 
 意外なことに加畠は 「高校は行かれるとよかです」 と言い、すぐに修行に入らなければならないと覚悟していた信を驚かせた。
「どうせ今拝霊会に戻られても、本気で修行ばされんこつでしょう。それより
もう少し世の中を見られるのもよかこつです」
 加畠の本心は分からないが、本家とのつながりを濃くさせたほうが後に操りやすくなる、と判断したのだろうか。
 玄関で信の背中にポツンと言った。
「…人間の世ば陰から動かす面白さ、いつかは信さまにも理解できるこつでしょう」
 
 
 そしてもうひとつ。思いがけない変化があった。
「太郎、聞いてくれよ〜」 匡幸にいきなり抱きつかれて、「えっ? なん?」 太郎がびっくりしている。
 大日本バイオインダストリーズが、訴訟は取りやめになったのの、今後のため 『地域住民との共存』 を目標に、地下水脈の調査とプラントからの排水浄化などの研究を始めるという。
「その研究に親父も加わることになってさ〜、東京に戻らなくてもよくなったんだぜ」
 
 太郎と道男が 「やったー!!」 と叫ぶ。
「なんだよ、信は嬉しくないのかよ」
「信も嬉しかよねー!」
 
 楽しそうな仲間たちに 「まあな」 とそっけなく答えたつもりだったが、少し笑顔になっていたかもしれない。
 


inserted by FC2 system